・リドルストーリー 〜結末なき物語〜 |
その1:F・R・ストックトン『女か虎か?』 |
昔々、ある国に野蛮な王様がいた。王様は壮大な円型闘技場を作った。命令に違反した容疑者はそこへひきだされる。闘技場の一方の端には、二つのドアがあり、容疑者はそのどちらかの扉を開けなければならない。一方の扉の奥には、
その国でもっとも狂暴なトラが潜んでおり、
一方の扉の奥にはその国で最も美しい娘が隠れている。
虎の扉を開けた容疑者は、たちまちズタズタに引き裂かれ骨になってしまう。
美女の扉を開けたものは、その瞬間に許されて彼女を花嫁に迎えることになる。 ――それが王様のユニークな裁判のやり方だった。 王様には目に入れても痛くないほど溺愛している一人娘がいた。 彼女は身分の卑しい若者と恋に落ち、二人は王様の目を盗んで密会を重ねていたが、とうとうバレてしまい、若者は闘技場にひきだされることになった。 そして、裁判の当日――闘技場は超満員となった。 観客はもちろん誰一人として、どちらの扉の奥に虎が潜んでいるのか知らされていない。 しかし、王女はそれを知っていた。彼女は半狂乱になって、その秘密を手に入れたのである。王女は恐ろしい虎と美しい娘の両方を前もって見ることが出来た。あの残忍そうな飢えた虎が、愛する若者を頭から噛み砕く光景を想像すると王女は失神しそうになる。 しかし一方、あの自分よりはるかに美しい娘が若者と一緒になることを想像すると嫉妬で気が狂いそうになる。血の激しさを父親から受け継いだ王女は、手に入れた秘密を若者に教えてやるべきかどうか、迷いに迷った。そして、ついに決断した。 闘技場に引きずり出された若者が、燃えるような目を自分に向けたとき、王女は密かな手の動きでその秘密を若者に伝えたのだった。 王女が若者に教えたのははたして美しい娘の隠れている扉だったのだろうか。 それとも、凶暴な虎の潜んでいる扉だったのだろうか。 |
解説 |
リドルストーリーとは物語の結末をわざと伏せて読者の想像にまかせる小説のことを呼びます。
上記のが史上最も有名なリドルストーリーで、百年以上前にアメリカで発表された、F・R・ストックトンの『女か虎か?』(要約文)です。 作者は物語の最後にこう書いています。 『王女がいずれかに決めたという疑問は軽々しく考慮すべき問題ではないし、作者はこれに答えうる唯一の人間だとうぬぼれる気はない。
そこで、作者は、すべての解釈を読者に委ねる。 さて、皆さんだったらどういう「解答」を出しますか。 |
さてさて、実はこの作者、熱心な読者にせがまれて、後に続編を書いています。
一体どんな結末が!?王女は?そして若者の運命はいかに?
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