・リドルストーリー 〜結末なき物語〜
最終章:リチャード・マスティン『箱の中にあったのは?』

リドルストーリーのコーナーは今回でひとまず終了。また機会があったらお目にかかりましょう。
それでは、最後のリドルストーリーをどうぞお楽しみ下さい!


(話のベースは……)
リチャード・マスティン『箱の中にあったのは?』

ある一人のへんてこなじいさんが、学校帰りの子供(アーニー少年)をつかまえて、こう言った。
「坊や、この原っぱを横切った所にある森をしっているかい?いいかい、森に入って最初の大きな樫の木のところへ行き、教会の塔の方をお向き。そして10歩歩いて、そこを10フィート掘ってごらん。中から大きな箱が出てくるはずだ。その中にあるものが入っているんだ。何が入ってると思う?」

アーニーは必死に考えた。「分からない。教えてよ」と言うと、おじいさんは意味ありげに笑みを浮かべ、言った。「そりゃあ、自分で掘ってみなきゃだめさ。でも君がビックリするようなものが入っている事は間違いない。どうしても答えを知りたきゃ、自分で森に行って確かめてごらん。きっとビックリするぞ」
こういうとおじいさんはニヤニヤ笑いながら歩いていってしまった。

家に帰ったアーニーの頭の中はあのおじいさんが言っていたことでいっぱいだった。だが、一生懸命考えても箱の中に何が入っているのか見当もつかない。森の中に一人で入っていくのは怖いが、好奇心がわずかに勝った。アーニーは、明日一人で掘りに行ってみようと決心した。

翌日、アーニー少年は学校が終わるや否や、家からスコップを持ち出し、森に向かった。
森の中をしばらく歩いていると、おじいさんが言っていた場所に行きついた。日はもう落ちかけていた。穴を掘る時間は少ない。少年は覚悟を決めて掘り始めた。しばらく掘り進めていくと、スコップの先に何か硬いものが当たった。周囲の土を払いのけると、鉄の箱が埋まっているではないか。おじいさんの言っていた事は本当だったのだ。アーニ―はつったったまま、震えながら鉄の箱を見つめた。

かなり長い年月埋まっていたらしく、全体が錆びに覆われている。
「きっと、びっくりするものが……」
震えが止まらなかった。アーニ―は箱の上へあがり、足で踏んでみた。うつろな、鈍い音がする。
……箱のふたは2つの部分に分かれ、そのどちらにも締金がついているのに、アーニーは気がついた。
アーニ―は歯を食いしばり、シャベルの先を締金の下に突っ込んだ。ふたの半分が開いた。おそるおそる中をのぞきこんでみた。その瞬間、アーニ―は悲鳴を上げた。そして思わず穴の壁のところまでとびさがり、恐ろしさに声もでず、箱の中を見つめた。

 「驚いたかい?坊や」箱の中で両膝を抱え、身を縮こまらせるようにして座っていたのはあのおじいさんだった。少年は恐怖のあまり言葉を失った。「だから驚くなっていったろう?」と言うなり、おじいさんは大きな声で笑い出した。狂ったような笑い声は、すっかり暗くなった夜の森にいつまでも響いていた。

アーニー少年の家では、夜になっても帰ってこない少年の両親が心配して、地元警察に捜索願を出した。捜索は翌朝まで続けられが、少年はどこにもいない。しかし昼頃になって、森の中から少年の履いていた靴とスコップが見つかった。遺留品が見つかった現場のすぐ横に土が不自然に盛り上がっている場所があったので、不審に思った警察官が掘ってみると、箱の中に入った少年の遺体が見つかったのである。よほど怖い目にあったらしく髪の毛は真っ白になっていたという。

(空白の部分を反転するとオチが……)

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